子ども部屋

query_builder 2022/06/17
設計
子ども部屋

住宅設計の世界において、子ども部屋をどうするか、古くから議論がありました。日本人は、近代において先進国の中でも子どもを大事にする傾向は強いようです。

「日本の木造住宅の100年」という312ページにもおよぶ資料があります。ここに詳しく、江戸期から子どもの居場所はどのよう推移したのかとの記述があります。江戸期においては、農家住宅の代表格の田ノ字の間取りであって、男はこの部屋で寝て、女はこの部屋で寝るというように〝個室〟という概念はなかったわけです。それが明治の啓蒙運動や大正デモクラシーの時代にくらいより、子ども部屋、すなわち勉学させる場所を設けようとの動きができました。広縁の片隅に机を置けるように拡張したり、プチ増築がはやったようです。これが日本的な子ども部屋のルーツといえそうです。戦後の高度成長期は学歴社会の高まりであり、核家族化が進み子ども部屋も〝勉強部屋〟という期待をこめて親はがんばって確保しようとしたようです。

昭和54年の調査でも、小学校4~6年生が子ども部屋をもつ比率が74%と案外高い。イギリスが54%、アメリカが59%にとどまっているのと比べて意外なくらい子ども部屋は普及します。その一方で、1980年代になると、少年犯罪が問題視され、その原因が個室にあるのではないかという〝子ども部屋不要論〟との意見が出てきます。その当時の子ども部屋が一番大きかった時代ではないでしょうか。当時田舎では、8帖くらい与える家庭が多かったのではないでしょうか。確かに当時くらいから青年が荒れてきたような。このころから、親と子の関係を巡る議論が多彩になります。近年でも〝引きこもり〟に代表される問題はおさまっていません。いわゆる「子どもの問題」を住宅の間取りによって対処できるのではないかとの考えが出てくるわけです。関連サイト:日本木造住宅産業協会


子どもの問題を間取りで解決できるのでは!?。との世の声を商業的に取り込んでしまえと住宅業界は動きます。分かりやすく形にしたのが、ミ○ワホームの〝生涯学習の家〟でした。これは、交流型の間取りということで リビング階段 を提案しました。(1997)家から帰ってきてすぐに階段を登り個室に行くのではなく、リビングで顔を見せてからという発想が、大きく世論に影響を与えたと思います。〝断熱性の進化で階段を廊下に置く必要性も無くなる〟今でも子育て世代からは、そのように設計を依頼されることは多いわけです。しかし 生涯学習の家 には、各居室に2~4帖の汎用性のある部屋があります。総2階の設計だから、2階を大きくするための意図があると思われます。そのまま影響されこの家に住んだ家族は、あまりにも居心地のよい子ども部屋のため、もしかしたら〝引きこもり〟を増やしてしまったかもしれません。

次に、世論に影響を与えただろうものが「頭のよい子が育つ家」でしょう。有名中学合格者の、子どもの勉強スタイルを調査した結果、子ども部屋で勉強する子どもよりも〝リビングやダイニングの雑然としたところで勉強する子どもが多かった〟という内容のもの。これにマスコミで一時話題になり、この流れに便乗した書籍や工務店もでたりもしました。親の心情として〝どうやって勉強させるのがよいのか〟ということが、子ども部屋の主たる目的であるため、的を得た良い方法論ではないでしょうか。


この様に、時代の移り変わりにより子ども部屋のあり方も変わっています。では、これから子ども部屋をどう考えたらよいか。吉田桂二著の「木造住宅設計教本」というものがあり、この本の中で端的に〝子ども部屋のポイント〟として3つ挙げています。

①子ども部屋は広がり空間の一部として捉える。
②子ども部屋に押入れ(収納)
をつくらない。
③複数の子ども部屋がある場合は、共有スペースを設けること。

とあり、これは端的ですが分かりやすく共感できるポイントです。

【①&③】吉田氏の設計思想の〝広がりのある間取り〟は、引き戸により開け放たれると2つの間はつながるという〝和の間の感覚〟を現代に生かそうというもの。子ども部屋も引き戸で廊下に開け放てれば、普段は交流し、独りになりたいときにはなれるといえます。

【②】子ども部屋が本当に必要な期間はそう長くはない。低学年のうちは、雑魚寝で個室を与える必要もないが、10歳には与えるタイミングかもしれない。そして20歳になって、大学なり社会人なりになって巣立っていくだろうし。子ども部屋は10年くらいあれば足りるもの。フレキシブルに対応できるようにしておく必要があるかと思うわけです。

押入れという布団しか入らない固定化した収納を設けるのではなく、置き家具などで可変的に収納が移動できるようにすれば改装が容易。間取りを固定化させない。もはや成人になってしまった子どもしかいない世帯であれば、言うことも聞かないだろうが、小学校までのお子様しかいない家庭は、親の主体性で子ども部屋を考えるべきだと思うわけです。

決まりきったご要望〝子ども部屋は6帖間をとって、それとは別に1帖の収納も〟本当にそれでいいのか。長期的スパンで家族のあり方を考えた場合は、そんなステレオパターンな要望でなくてもいいんじゃないか。もっと色々と考えてみてはどうでしょう。ちなみに、げげさんのYouTubeより、ひとつの答えとして子ども部屋について詳しく解説してくれています。とても参考になりますので、是非、ご視聴ください。


動画:げげ

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